きちんとした指導は学校に行ってから?

☆入学前にできるようになってほしいこと☆



   幼稚園では、基本的には文字指導はしなくてもよいのです。けれども、多くの幼稚園では、 文字教材を購入しています。幼稚園での文字指導の必要性を感じている証拠ですね。

 でも、幼稚園の先生たちは、大学で文字の教え方を習っていない上に、指導マニュアルがないため、 みなさん手さぐりで指導をされています。ですから、指導にはたえず不安を持っておられます。
 保護者もまた、見よう見まねで文字を書きはじめたわが子に、どのようなアドバイスをして よいかわからず、不安を抱えながら教えています。

   「いつから書かせればいいのか」
   「どの程度書けていればいいのか」
   「どのように教えたらいいのか」

と不安だらけ。
 そんな保護者の思いをもとにして、入学以前の文字の書き方・書かせ方について考えてみました。


        なお、【研究ノート】として別に分析と考察を行っております。関心のおありの方はこちらもお読みください。
               こちらをクリック→〈入学前の文字指導の在り方〉『保護者の声』における分析と提言




★文字の書き方の指導はいつから始める?★


ある幼稚園での、保育中に文字の指導を行うことについての保護者の意見です。

 ・幼稚園で客観的に指導いただけると助かります。

 ・年長になってかきかたが始まるけど年中から始めてもらえるとよかったかもしれない。

 ・園で努力してくれるのでおやとしては安心です。

 ・年中になってようやくひらがなが読めるようになったばかりで まだまだこれから教えることだらけです。幼稚園で指導して頂けるのはとても心強いです。

 ・「読む」ことはすぐにできたのですが、なかなか「書く」ことが上達できずにいます。

 ・幼稚園でひらがな等の練習を経験していると小学一年での文字の練習がスムーズに移行できますので、重点課題として園が取り組んでいただける事、とても感謝しています。


多くの親が幼稚園での指導を望んでいます。親が教えてもうまくいかないか、何もしないで学校に行かせて辛い思いをした親の多さではないでしょうか。さらに、年長から字を教えても十分ではなかったと感じると、「もっと早くからはじめれば・・・」と思うでしょう。

左に挙げたように、さまざまな意見はありますが、これらはすべて、入学後の書写能力の較差における不安からです。入学前にわが子が文字をあまりうまく書けないと感じたとき、「入学後に授業についていけないのでは・・・」という焦り、あるいは「学校がきちんと面倒をみてくれないのではないか」という不安があるから、やみくもに字を書かせたくなるのです。そして、うまく書けないと、もっと早くから書かせれば良かった、と思ってしまいます。

でも、早くから書かせればよいというのはまちがいです。発達段階によっては、鉛筆を持たせること自体が早すぎて無理な場合もありますし、文字への興味・関心がない場合はいくら教えても身につきません。

そうはいっても、持ち方や筆順のまちがいを容認してしまうと、幼児独特の鉛筆の持ち方や筆順が身についてしまうという心配も、ごもっとも。

幼児期での文字の書き方、書かせ方の目安がないことが、不安を増長させるのです。

専門家の、確かな情報の提供をして欲しいですよね。

といっても、その信頼できる情報は今のところ…ない!! (><:)

★親が指導をしてみて、あるいはする時の不安や疑問★

 ・親自身が持ち方に自信がないため教えることができない

 ・今まで全くかけないこどもは素直にすんなり入っていけてヘンなくせがつかないと聞いていますが・・・

 ・園では50音順で書いているのですか?それとも簡単な字から書き始めているのでしょうか?!

 ・ ・・・本人が書きたいように書くので違うよ、こうだよと直そうとしても聞かないことがあります。  ・園で他のよい子さんと一緒に出来たら素直にできるのでは・・・という期待もあります。

 ・先生方に教えて頂くのが子どもにとっては一番身につく方法だと思いますが、家でも同じように指導できれば よりよいと思いますので親も教材に触れたり注意点などがわかると良いのではないでしょうか。

 ・家の方でも少しずつ文字を読む練習をしているのですが、なかなか覚えられないようです。 お友達の中にはすらすら本を読める子も文字を書ける子もいてかなり親があせりを覚えますが まだ文字に興味が持てないのかと思い少しずつでも覚えて欲しいと気長に取り組んではみています。 本が好きでも読んでもらうのが大好きでどうも自分で読むという感じになってません。

 ・うちでもワークブックをさせることがあるのですが、ただなぞったり、 お手本を見て書くだけのものではすぐあきてしまうみたいです。

「教えなかったことでの焦り」 「教え方がわからないことの不安」「教えても身につかないことの不安」「注意しても直そうとしないことへの苛立ち」 など、入学が目前になりますと、よけい いらいらがつのりますね。誰も、不安を解消してくれないからです。

 それで、子どもたちについつい八つ当たりをしてしまうようになります。 回答の中には、不要な不安や苛立ちが、ずいぶんとありました。

 子どもたちの書き方を見ておりますと、「親の教え方が間違ってるなあ。」と思うことがよくあります。それと同時に、教材(ワークブックやドリル)の与え方がよくないのではないかとも思います。

文字の学習で、もっとも多いのが“なぞり”です。うすい色で書かれた文字、あるいは点線で書かれた文字をなぞる方法が、一番わかりやすい学習方法です。下書きされた文字を、ていねいにはみださないようになぞるという目標を理解させておき、あとでそれをチェックして、ほめるなりしかるなりすることもできます。

でも、書いている途中をきちんと見ていないと、どのようなことが原因でうまくかけないのかがわかりませんし、筆順のまちがいも注意できません。教材の与えっぱなしは要注意!! です。  

文字を教える場合、ひらがなの59音表のじゅんに、「あいうえお」から書かせるのもよくないです。
運筆の易しい字から書かせるほうがいいですね。 

     


★具体的な書き方への不安★


 ・鉛筆の持ち方や姿勢がだんだんと崩れてくる

 ・小学校の先生が口をそろえておっしゃることは、エンピツの持ち方が正しくなくて矯正できないくらい身についてしまっているということです。

・家庭で身についたエンピツの持ち方の矯正を園でするのは大変かとは思いますが、 園だからこそ素直に子供たちが受け入れられるのではないでしょうか。

 ・上の子で実感したのですが、注意をすれば治るけど、見ていないと姿勢が崩れてしまう、ということです。 自分で見ていたころは気になりませんでしたが、習い始めてお任せしていました。 学級の参観であまりにも姿勢が悪くて驚きました。

やはり細かい所までとなると少人数制でないと難しいかな?と思いました。

 ・鉛筆の持ち方、姿勢については小さい時にしっかり身に付けてほしいところです。

 ・鉛筆の持ち方も気になりますが、姿勢が悪く 目が近くなり気になっています。 気が付いた時は注意するのですがクセになっているようです。ご指導いただけたら幸いです。

 ・子どもたちの鉛筆の持ち方が悪くて困っています。持ち方が悪いと姿勢まで悪くなり、 家でも何度も繰り返し注意していますがなかなか直りません。 よく鏡字になってしまっているのに"別にいいじゃん!"と気にしていません。

なるべく正しい姿勢で書くように注意していますがなかなか直りません。

 ・家でひらがなの練習はしていますが書き順とえんぴつの持ち方を教えることが難しいと思います。 持ち方はどうしても"くせ"があるみたいで何度言ってもなかなかです・・・ すでに幼稚園でも少し習ったのか時々は「えんぴつはこう持つんだよねー」 と正しい持ち方をしてみせてくれる事もあります。クラスのみんなで練習すると正しい持ち方になるのではと 期待してしまいます・・・

・字を書き始める時、姿勢と丁寧に書くことは教えたつもりなのですが、これもなかなか・・・です。

・以前"公文"で扱っている鉛筆や色鉛筆を見たことがあります。三角形で短めの長さ・・・ 幼児から小学校低学年用に作られていて、確かに子どもにも扱いやすく、 何よりも正しい持ち方が習得出来ると感心しました。
 
“鉛筆の持ち方”や”姿勢”に対しての意見はとても多く、親の関心事であることはよくわかるのですが・・・

これらは、親だから言うことを聞かないのではなく、ことばによる注意では、なおらないということです。

 現在市販されている文字教材だけでは、姿勢も鉛筆の持ち方も直りません。親が言って聞せても、幼稚園で言って聞かせても、その場限り。放っておくと、“自然に”悪くなるのです。多くの場合、子どもたちの指は、鉛筆をうまく持てるほど器用ではなく、姿勢良くして書けるほどゆとりはありません。 

 鉛筆の持ち方が悪いのは、正しい持ち方では書きにくいからです。鉛筆は本来、指先で持つものですが、 幼児は指の器用さがまだ充分でないので指先だけではうまく持てません。ですから、ぎゅっとにぎりしめて鉛筆を 安定させます。この持ち方では、姿勢良くした状態では指がじゃまをして、手元が見えません。 それで身体を傾けて手元を見ます。だから姿勢が悪くなります。
 さらに、鉛筆をぎゅっとにぎりしめただけではまだ不安定なので、机にすがりついて安定をはかります。 ますます姿勢が悪くなります。
 鉛筆をぎゅっとにぎりしめると指や身体に力がはいってしまうため、指が痛くなったり、 すぐに疲れてしまいます。

“鉛筆の持ち方”と”姿勢”の躾はニワトリとたまごのような関係で、持ち方が悪いから姿勢が悪くなる、姿勢が悪いから持ち方が悪くなる、という悪循環をします。

 ではどのような解決法があるのでしょうか。

 アンケートの回答にありますように、用具の選び方は大切です。
太い鉛筆がよいことは、ずいぶん前から言われています。でも普及していませんね。この鉛筆がよいことはわかっているのですが、すぐに手に入らない、削りにくい、目をはなすと子どもたちは、身の回りに大量にある普通の鉛筆で字を書く、など良いとわかっていても使い勝手の悪い用具でもあるのです。

 鉛筆の工夫、持ち方を直す補助器具は一時期色々考えられましたが、いずれも大ヒット商品になっていないのは、子ども自体が必要としないこと、持ち方が身につくまでそれを与え続ける大人の根気がないからです。
 私の教室でもいろいろな工夫をしていますが、持ち方の悪い子ほど、必然性が理解できないので、このような用具をいやがります。

  持ち方や、姿勢に関しては、早い時期に指導すれば、それだけ早く身につくというものではありません。小学校に入ってから、多くの文字を長い時間書くようになると、また一時的に持ち方が悪くなることも、よくあることです。習慣として身につくまで根気よく指導することが必要です。