-幼児期に身につけてほしいことアレコレ-


『文字の書き方@書かせ方 運筆編 』




辞書には、「運筆とは、文字または文章や、絵をかくときの、筆の動かし方。筆の運び。筆づかい」とあります。

「筆」とあるのは、このことばが毛筆を学習で発生したからでしょう。

けれどここでは、運筆とは、文字を書くときの、鉛筆の使い方、文字を構成する線の書き方のこととをいいます。

運筆練習によって、

「いろいろな形の線が、自由に書けるようになるための力をつける」
「無駄な力を使わず、楽な線の書き方を身につけ、長時間の書写に耐えられるようになる」

これが運筆力の必要性。




★年長クラスの保護者の意見をあげてみます★ 

1、「あ」「め」などまるくかく文字が見ながらでも書けない

2,はねや、はらいや丸みを持たせるところ、とがらせるところなどの区別が覚えられない

3,お手本を見ながらていねいに(おちついて)書く姿勢がなかなか身につかない

4,書く方向が混乱することがある。(下から上 右から左)

5,便せんなど線の上にきちんとならべて書くのが苦手

6、幼稚園ではとめ、はね、はらいなどは教えてもらいたい。

7.とめやはらいの区別がむずかしくて理解してないようです。

8.きれいに書こうとすると、2Bをつかっていてもものすご~く力が入っている上に姿勢もわるくなっている。

などなど・・・

「まさに、そのとおり!!」という親の声が、聞こえてきそうです。
 いくら教えてもできないのは、子どもたちにやる気がないのではなく、大人の言うことがうまく理解できない、あるいは、まだうまく書けないからです。

そう、まだ「適齢期」じゃない、ということです。ひらがなは、親が考えている以上に書きにくいのですよ。一文字の中で、線がいろいろな方向に変化しますからね。

個別に対応できる教材もあまり出ていません。自然にステップアップしてゆく教材があればよいのですが、それが今のところありません。   現在の教材は、小学校1年生で使用するものと対して変わりがありません。

それを使わせて「なんで手本にとおりに書けないの!?」と困ったり、叱ったりするのですから、親も子も気の毒としか言いようがありません。

「ならば、どうしたら良いのですかッ!!!!」と、怒りの声が聞こえそうですね。

みんなで、怒りましょう!!要求をしましょう!!!

「どこへ言うんですか~?」

う~ん・・・困ったことですねえ・・・やり場がないとはこういうことですか・・・

 「一緒にがんばりましょう!」
 個人的なご相談、ご意見は、当方までどうぞ。どうぞ、ご遠慮なく。
 




★「文字の前に運筆練習を」★

はやし浩司さんのHPには、文字を書く学習についてかなり詳しく書いてあります。はやしさん(先生とお呼びすべきなのかもしれなません)は、長年、育児・教育指導に関わっておられる方のようで、幼児期の文字指導についても、しっかりとしたお考えをお持ちです。

文字を書くにあたって、運筆練習が必要であることは、誰もが言うことですが、はやしさんの論は迫力があります。まさに、現場から出た声です。(私などは、保育全体には関わっていませんので、ここまでキッパリといえません)はやしさんのことばを引用させてもらい、運筆練習の必要性について改めて言わせてもらいます。


 「文字を書くようになったら、(あるいはその少し前から)、子どもには運筆練習をさせるとよい。
一時期、幼児教育の世界では、ぬり絵を嫌う時期もあったが、今改めてぬり絵のよい点が見なおされている。子どもはぬり絵をすることで、運筆能力を発達させる。
 ためしにあなたの子どもに丸(○)を描かせてみるとよい。運筆能力の発達した子どもは、きれいな(スムーズな)丸を描く。 そうでない子どもは多角形に近い、ぎこちない丸を描く。
 言うまでもなく、文字は複雑な曲線が組み合わさってできている。その曲線を描く力が、運筆能力ということになる。
 また、ぬり絵でも、運筆能力の発達している子どもは、小さな四角や形を、縦線、横線、あるいは曲線をうまく使ってぬりつぶすことができる。そうでない子どもは、横線なら横線だけで、無造作なぬり方をする。」


確かに、指先の器用さの発達している子どもは、描画(お絵かき、ぬりえ)などもうまいようです。はさみや折り紙などもよく使う子は指先が器用です。

私の教室でも、ときどき、折り紙で飛行機を折らせます。うまくできない子には、運筆練習の出来が悪い子が多いですね。

また、とりあえず文字は書けていても書き癖が直せない子は、やはり運筆能力に問題があります。(運筆が充分でないのに無理な書き方をさせられたかな?)





★線遊び★

線遊びと運筆練習は関係があるかどうか気になり、線遊びについて少し調べてみた。


 「線あそびとは、3歳未満児がクレヨンやマーカー等の筆記用具を握って線を描いて楽しむ行為。(1歳前後から始めるといわれている。) なぜ、1歳前後になると線あそびを始めるかについては、その理由は、まだ十分に解明されていない。ただ、どの子も始めることが事実なので、人間としての自然発生的行為としてみられている。 チンパンジーも画用紙とマーカーを与えられると線あそびをするが、円スクリブルに終わってしまい、その後の発達は見られない。ここに、人間の持つすばらしい力を知ることができる。
子供の遊びを見ると、土の上に絵を描いたり、画用紙に絵を描いたりしているが、いずれも線での表現が多い。 線での表出や表現の活動は子供にとって最高の方法であるからと言われている。 発達的にみると、1歳前後で線あそびが始まり、年少・年中・年長になっても絵を描く時は、線描きが中心となっている。
表出とは…心の吐き出し的行為であり、心の中が自然に表れている、いわゆる「あらわれ」である。 表現とは…心を意図的に外に表し、誰かに伝達しようとする行為であり、いわゆる「あらわし」である。 子供の線あそびは、「なぐり描き」のようにいい加減な線ではない。「スクリブル」は、線あそびに至るまでの発達段階の1つである。子供の線あそびは、決して「なぐり描き」ではなく、表出活動であり、人間として生きている証である。」


勉強不足で、専門的なことはうまく理解できていないかもしれないが、このようなことが書いてあった。つまり、線あそびは心の吐き出し的な行為であり、誰かに伝達することを目的としており、その行為には段階的な発達があるということのようだ。

確かに、幼児期の描画を見ると、徐々に形となっている。同じクラスでも、子どもたちの絵を見ると、ずいぶんと差がある。その線にも、運筆的な差がある。のびやかな線で書いている子もいれば、ぎくしゃくした線の子もいる、大きな呼吸でゆったりとした線で書いている子もいるし、ちまちまと書いている子どももいる。

書写的な目でみると、この書き方が文字の運筆力につながって行くのであろうと思う。そして、気になったのが、「近頃の子どもたちは、この線遊びが充分になされていないのではないか 」ということである。おもちゃが氾濫しているため、それほど線遊び、描画をしなくなったとは言えないのだろうか。それには住宅の環境などもあるかもしれない。土がない。外で遊べない。借家などのため家を汚せない。など、線遊びを思い切りする環境も悪くなっているのではないか?

手書き文字における環境の悪さの一因を見たような気がする。





★鉛筆の持ち方と運筆  ふたたび、はやしさんのHPから ★ 

 「鉛筆は、中指の横腹に鉛筆を置き、親指と人差し指で支えてもつ。 鉛筆をもつようになったら、一度、正しい(?)もち方を練習するとよい。(とくに正しいもち方というのはないが、あまり変則的なもち方をしていると、長く使ったとき、手がどうしても疲れやすくなる。) ちなみに年長児で約50%が鉛筆を正しく(?)もつことができる。 残りの30%はクレヨンをもつようにして鉛筆をもつ。残りの20%は、それぞれたいへん変則的な方法で鉛筆をもつ。
 さらに一言。一度あなた自身が鉛筆をもって線を描いてみてほしい。 そのとき指や手、さらには腕がどのように変化するかを観察してみてほしい。 たとえば横線は手首の運動だけで描くことができる。 しかし縦線は、指と手が複雑に連動しあってはじめて描くことができる。さらに曲線は、もっと複雑な動きが必要となる。
 何でもないことのように思う人もいるかもしれないが、幼児にとって曲線や円を描くことはたいへんな作業なのだ。
 「どうもうちの子は文字がへただ」と感じたら、紙と鉛筆をいつも子どものそばに置いてあげ、自由に絵を描かせるようにするとよい。ぬり絵が効果的なことは、ここに書いたとおりである」


 重要なアドバイスである。子どもたちがなかなかうまく書けないのが「の」「ひ」「え」「あ」「ぬ」・・・

 これらの字には、曲線にさらにいろいろな角度の直線がつながっている。そして、それらの線が交差までしているのである。

 ガミガミ叱る前に、楽しくぬりえを・・・





★字をきれいに書く必要性  某教材会社のうたい文句に拍手! ★

 正確な字形はきれいな字への近道。〈書くこと〉そのものも楽しくなります。
 「この子はくせ字だ、乱雑な字だ」とあきらめないで、さあレッツ・トライ!
 「せっかく正しい答案が書けているのに、ひらがなや漢字がまちがっている。」
国語のテストでは、これは減点になってしまいます。また、算数でも、「6なのか0なのか区別できない」場合には、×がつけらます。
 点数の問題だけではありません。きれいな字が書けるということは、文字でのコミュニケーションの基礎ができているということ。書くことが苦痛でなくなれば、文章力やひいては勉強の意欲にもつながっていきます。「きれいな字」は大きな財産なのです。
 「うちの子は汚い字しか書けない」とあきらめないで、ぜひ小学生のうちに、きれいでていねいな字が書けるようにしておきましょう。

 ということで、「くせ字はらせん運筆で克服(全学年向け)」と、らせんを書くことを推奨している。
たしかに、らせんは効果的な運筆練習であるように思われる。しかし…

手指の未発達な子どもたちに、らせんを書かせると、指先を動かすために、ひじやおなかが机にべったり…

どうやら、それ以前の運筆練習が必要なようだ。子どもたちの運筆力は相当に病んでいる。嗚呼…






★親の悩みその1 ★ 

ネットにあげられたものをどこまで引用して良いのか、個人情報云々でややこしい。でも、引用した方が、「そうそう、うちも同じ!!」と、悩みが共有され、それで子どもへの風当たりがやわらぐこともあるはず。また、問題の解決につながったりもすると思います。

ということで・・・とあるブログから。

現在、4歳4ヶ月。仕事と育児の真っ直中のお母さんの心の声です。


運筆の練習がすすまない。
うーん、うちの子の運筆の練習がすすみません~
うちの子、字を読む方は、どんどん進んでるんですよ。
乗り物大好きっ子なのでね。地名を覚えるついでに漢字も覚えてくる。 知らない文字も勘で読んですましています。
が、書く方には、イマイチ興味がないらしい。
で、せめて運筆の練習を、ということで、迷路のドリルを買ってみましたが。
壁は通れない、という基本ルールが通じない・・・


はい、うちの長男もそうでした。読みはものすごく早くて、しゃべるのと文字を読むのが同じくらいでした。でも、文字を書き始めたのは遅かったですよ。きっと必然性が見えなかったのでしょう。 私は、入学まではわが子の興味にまかせていましたので、その較差はあまり気になりませんでしたが・・・
 文字を書き始めたら、あっという間に書けるようになりました。ただし「書き方」は自己流でしたが。

書くことに興味がない、必然性もない時期に文字を書かせるのは、指導は相当な工夫が要ります。

まだ4歳前半なら、無理をさせなくてもいいでしょうが、これが6歳ころになると、親は焦りますよね。

嫌がる子に。むりに字を教えるのはどうかとおもいますが、手指の器用さを高める遊びは、できるだけ親子でやっておいたほうが、書くことには有利です。

手が器用であれば、書くことに興味を持ったときに書けるようになります。

同じようなブログは他にも色々ありました。おとなからすれば、「こんな簡単なこと」と思えることが、「時期尚早な子」には、かなり難しいことなのです。「潮時」を待って、時期が来たら頑張る。それが理想。でもその「潮時」がわかりにくい。指導の仕方もわからない。どこにも書いてない。

問題はそこなんです。

書写教育の専門家の先生方、どう思っていらっしゃるのかしら???






もう少し、運筆練習についての親の声を紹介します。

 ただ、線をなぞる、ということ自体に「やらされ感」があるみたいなのね。 「好きなように書かせんかい!」みたいに内心思ってる気がする・・・。 でも、なにしろ練習不足なものだから、好きなように書かせても、思うとおりに線が書けないわけで。 で、ちょっと書いて、なんだかつまんないから、やーめた、となっちゃう感じ。

  うちの子、同い年の子に比べて、お絵描き系のスキルが見劣りすることは、以前から気づいてて、ま、親としては、そのうち目覚めるだろう、と気にしていなかったわけですが、小学校受験準備をすると一応決めてからは、これも早めにできておいた方がよかろう、と判断したわけで。 でも、線を描くというのが、大人には簡単な作業でも、子どもには結構難しい作業なのだなあ、とわかったのは、発見でした。

 うちの子の苦手な「巧緻性」対策をと思って、私が頑張ってはいるんですけど、慣れないことをがんばったあげく子どもがのってくれないと、疲労します。 例えば、「よみきかせ」は私、好きで、勝手に読んでても苦じゃないものなんですけど。 でも、よみきかせがもともと好きじゃないのに、子どもが読んでも興味を示してくれないと嘆く、お母さんの気持ちがちょっとわかった気がします。。。

 うちの子、描き始めると、数分で飽きちゃうんです。描くことを嫌ってるわけじゃないんだけど、なにしろ基礎ができてなくて、うまく書けないから、つまらないんです。 もう、やっぱりココが課題のような。 ちなみに、工作というか巧緻性の方も、いまいち、という評価で。 のりやセロテープを使わせてくださいね、ということでした。 やっぱり、親の巧緻性がイマイチだし、クラフト系の趣味も皆無なので、子どもがそういう方面に興味を示してくるはずもなく。 まず、親が興味を広げないと、という話になっちゃうのかもしれません^^;。

 どうやら、文字を書く前に、まず手指の器用さをつけましょう、ということが課題のようですね。






★いつから文字を書かせる?★

 否定的な意見ばかりでもありません。親子でがんばれば、小学校に行ってからでも遅くはありません。


 ウチの子供も何も習わずに入学しました。 同じく小学校一年生です。 ウチの場合は姉が教えなくても何でもこなすタイプだった為、下の子も勝手にひらがななんぞ教えずとも書けるようになると思い込んで教えずにいたら・・・入学までに書けませんでした。(今思うと当然ですね)
 入学時「ひらがな、書けませんね!」と先生に苦笑されましたが・・・。 先日先生にお会いした時「一生懸命丁寧に字を書いていてがんばってますよ!ハネや止めが正確です!」とほめていただきました。
 ひらがなを覚える時、重要なのはハネや止め、書き順です。 それと丁寧に字を書く習慣をつけること。ココで間違えたり怠けていると、高学年になって直すのはとっても大変です。 もし(文字を入学前に教えておかなかったことを)後悔していらっしゃるのでしたら、今このスタート時期にきっちりお子さんと一緒に確実に書くということをやってみてはいかがでしょうか? 逆にチャンスなんだと私は思っていますよ!


そうなんです、入学直後であきらめてはいけません。最初は、「ほかの子はみんなすらすら書けるのに」と、親の方が焦るかもしれませんが、焦るより、じっくりと腰を据えて親子でむきあうことが一番大事であると、私も思います。入学前に完全を目指してはいけません。否定的にならず、前向きに、前向きに。





★運筆練習のススメ★ 

 文字はあるていど読めるのに、書きたがらない子は、手指が器用でないために、書こうとしてもうまく書けず達成感がない。それで意欲を失い、ますます運筆練習や鉛筆の持ち方への興味・関心を失う、という悪循環をくりかえすのでしょう。

「最初が肝心」と、文字もろくによめないうちに、教えようとする気持ちもわからないではないのですが、それぞれの子どもの発達の状態に応じた教え方が大切でしょうね。

幼児期の個人差はとても大きいですから、誰もが同じようにはいきません。無理をしない、させないことが大切です。