NARU書きかた教室【あんなことこんなこと】

☆〈現代書写事情〉2005年 ライブバージョン☆


2学期は成長期!

  実り多いのは米や野菜だけではありません。
 運動会に遠足、芋掘り、栗ひろい・・・実りの秋に、子どもたちも実ります!
 1学期には、
「先生、もう手が痛い・・・」
「あと何枚?」
と、ためいきばかりついていた子が、
「もっとプリントちょうだい。」
「まだ書く!」
と言うようになるのが、毎年この時期。ぐんぐん上達!
これが楽しくて、教師がやめられない!  (^0^)/


           ☆12月の あれや これや☆


【12月17日】  《鉛筆の持ち方についてのメールをもらいました》   

 “梅田周辺・阪急宝塚沿線で、「正しい持ち方」を重要だと考え、まずは持ち方指導から行っているようなすばらしい教室をご存知ないでしょうか?”
 という問い合わせのようでした。残念ながら、私は広島在住なのでそれにはお答えできませんでした。m(_ _)m

 ただ、メールの中で気になったのが、
 “硬筆を習おうと色々教室見学に行きましたが、どこの先生も俗に言う「正しい持ち方」をしておらず、ことごとく持ち方は無関係だとか言われました。事実私は手が痛く、字が汚く、腰が痛くて悩んでいるのに…。”
と書かれていたことです。鉛筆の持ち方を正しくしただけですべてが解決するとは限りませんが、姿勢や持ち方は、時間がかかっても直した方が、身体にかかる負荷は軽くなります。また、持ち方を変えると字形も変わってくるのは事実です。

     ・・・どこか近くでよい教室が見つかることを祈っています。



【12月3日】  《鉛筆の持ち方についての研究発表がありました》   (中国地区大学書道学会 於:倉敷国際ホテル)
 
 『中国地区大学書道学会』というのは、中国地方5県で書道の先生をしている人たちで組織されているものです。
 今回、鉛筆の持ち方に関する研究発表があるというので、倉敷まで出かけました。
 会場は倉敷美観地区の入り口。紅葉が最後の見頃で、大原美術館の前はとても綺麗でした。しかし、あの食べ歩きは何とかならんものかと思います。幼稚園児じゃあるまいし、歩きながら物を食らうことはいつから公認されたんでしょうか。   おばさん達、やめてけれ〜(><);

 私が聞きたかった発表の内容は、「鉛筆の持ち方を正しくすれば、字の形はよくなる」ということの実証と、持ち方を正しくするための補助器具の紹介でした。 
 発表者から、「文字を書き始めたとき、鉛筆の持ち方をきちんと躾けなかったツケが文字の形に表れている」と、幼児期や入学後の書写の在り方への批判がありました。ご意見はたしかに的を射てますが・・・「鉛筆の正しい持ち方」を知らない今の親や教師に書写指導したのは、誰でしょう?(と言ってみたい)

 「鉛筆を正しく持つことは大切です」と口を揃えて言うけれど、持ち方によって、どれだけ結果に差が出るかということには、ほとんどの人が実感を持っていません。だから、どうやったらうまく持ち方を躾けられるかということの論議が活性化しないのです(> <)
 文字を書き始めた時に持ち方の指導をするべきといわれても、手指の不器用化の進んだ今日の幼児には、鉛筆を正しく持たせることは至難のワザ。

持ち方を直すための器具の紹介がありましたが、幼児にとってはこれは恰好の遊び道具となるだけで、常時使用できるものではなく・・・。もっとも、これは、現在市販されている補助器具全般に言えること。

 とはいえ、大学の研究者が、用具の持ち方を取りあげてくださったことは、とても嬉しかったですね。発表をしてくださった今井先生や前田先生に指導を受けている岡山大学の学生は、きっと子どもたちに持ち方の指導をしてくれるだろうし、実証に協力した中学生が親になったり指導者になったときには、持ち方の大切さを伝えてくれるであろうから。

 気持ちのあたたかくなった一日でした。


【12月2日】
 《幼稚園の先生がたの文字指導を見学しました》
 
 本年度、ルンビニー幼稚園では、園児が鉛筆を正しく持って書けるように、各クラスの先生がそれぞれに工夫して積極的に指導されています。
指先が上手に使えるようにと、指先を使った遊びも積極的に取り入れています。

 今日は、年中・年長のクラスが一斉に文字のおけいこをして、その指導の様子を見学させてくださいました。
 私の予想以上に、ずいぶんと多くの子どもたちが上手に鉛筆を持って書いていました。先生方の努力のおかげでと思います。
 「書き方の先生(塩出)が見学する」というシチュエーションに子どもたちはちょっと緊張していましたが、文字を書くことが苦痛な様子は見られず、子どもたちは字を書くことに関心が高いことがよくわかりました。そして、各学年とも、もっと積極的な指導も可能であると感じました。 
 子どもたちはみんな、先生の指導をよく聞いて、一生懸命に文字を書いていました。先生方は、指導に自身がないとおっしゃっておられましたが、どうしてどうして、立派なものです。 
 


☆ 書写能力の較差 ☆ 


  「インターネットでおたくの書道教室のことを知ったのですが・・・」という電話をもらった。

 来年小学校に上がる子であるが、文字は書けないとのこと。 電話ではあまり立ち入ったことも聞くことはできなかったが、依頼者は保育園に通わせているという。その保育園では文字の指導はないとのこと。
 すべてとはいえないが、保育園では文字指導はあまり行われていないようである。

 教育上のたてまえとしては、文字の指導は入学後となっている。しかし、それを信じて入学したら、まわりの子どもたちはみんな文字が書けていた。「これは大変!!」 というケースは少なくない。
 最近は、入学後の書写の学習ペースは非常に速く、「入学するまでに文字の読み書きがある程度できていなければ、学校で子どもが苦労する」という親の気持ちもわからなくはない。
 
 とはいえ、文字を書くことは、それほど早くから始めなくても良いとも思う。
 早くからドリルを買って書かせるより、箸がうまく使えるようきちんと躾をし、折り紙をしたり、ハサミを使って工作をしたりして指先の器用さを養ったほうがよい。そうすれば、文字がすらすら読めるようになったら、文字も無理なく書けるようになる。指の器用さが発達していないのに、早くから書かせると、ヘンな書き方が身についてしまう。

 最近の子どもは、ホントに不器用。だから鉛筆がうまく持てない。鉛筆を握りしめて、必死で書いている。字の形に気をつけるゆとりもない。字形が悪くても、鉛筆を持つ指のコントロールが悪いのだから直らない。

 しかし、「とりあえず書けるようになることが先決」と親は考える。

 手指の器用さによる書写較差は予想以上に大きい。  


   

 Sくんは一人っ子でとてもおとなしい子です。鉛筆はきちんと持っていました。これまで、無理に文字を書かせなかったからでしょう。
読み書きには最近関心が強くなったとのこと。読めようになったことがとても嬉しそうです。指先も器用に動きますから、すぐに運筆のコツを覚えて、線の練習も根気よくやってくれます。
字形や筆順に対しても、知的な理解がきちんと伴うので、学習ペースがどんどん早くなっています。 
 書写の学習を開始する時期として、とてもよかったと思います。今後の成長が楽しみです。

 別の保育園に行っているHくんもやはり読み書きにはあまり関心がありません。この春からおけいこにやって来たのですが、読み書きには興味がなく、教室では、じっと座ることもできませんでした。
 一時期は、これでは本当に入学してからが大変だろう、と心配をしましたが、最近は、書くことにずいぶんと前向きになっています。
 やはり時期が来たのだろうと思います。あまり走り回らずにおけいこするようになりましたし、書くことのルールが少しずつ身についてきました。ホッ。

 早くから書き始めた子どもも、なかなか文字に関心のなかった子どもも、それぞれに心配の種がつきません。
とりあえず書けるようになったらきれいに書いてほしいと思うのが親心。

 文字はパソコンで書く時代とはいえ、未だに多くの大人が 悪筆コンプレックスを持っています。

 多くの人のシアワセのため、習字教室を活性化させなくては!!  

 全国の習字教室の先生、頑張りましょ〜う!!
     

☆鉛筆の持ち方が悪くなるとき ーその2ー☆     

 ゆりちゃん(年長)は、とてもよい鉛筆の持ち方をします。指先が器用なこともありますが、あまり早くから無理に文字を書かせていなかったことも良かったのでしょう。
 年長の2学期からおけいこを始めましたが、姿勢もとてもよく、理想的な書き方です。時期的にも、文字には関心が高くなって、字の形や筆順に対しても理解が良くできます。
 この3ヶ月は、とても順調におけいこしてきました。ところが・・・
 先週のおけいこで「???」と思うことが・・・
ゆりちゃんの持ち方が変なのです。鉛筆をぎゅっと握ってしまい親指が突き出ています。
 お母さんに伺いますと、やはり家で文字を書かせたとのこと。詳しいことは聞きませんでしたが、たぶん一生懸命に書くあまりに、持ち方が固くなったのでしょう。もう文字がずいぶんと書けるようになったので、たくさん書きたいという気持ちから、急いで書くことを覚えたのでしょうね。
 やはり、早く書くようになってくると、持ち方がついてゆかないのですね。幼児期ではまだ持ち方が定着しにくいということです。

 ゆりちゃんも、しばらくは受難の時代。

☆鉛筆の持ち方が悪くなるとき ーその1ー  ☆ 

現代っ子には、教科書に示されている鉛筆の持ち方は本当に難しい(>_<);  

   

 


 まさ君(年中)はお姉ちゃんにくっついてきて2さいころから文字のおけいこをしています。といっても、2さいでは文字など書けるわけはなく、もっぱら線遊びでした。そのころは、鉛筆も上手に持っていました。
 「やはり早くから始めると違いますねー。」とお母さんも満足そう。私も、「きちんと指導すれば、このとおり3才でもう鉛筆が持てるのです。文字を書くよりまずは持ち方の躾です。」と、ちょっと得意でした。
 それが、年中になってしばらくすると、急に持ち方が悪くなりました。親指鉛筆に巻きこんでしまうのです。運筆も速くなってしまい、書き方が雑になってきました。
 「まさ君、持ち方!」「もっとゆっくり書く!」と言っても、聞きいれません。
 どうやら、鉛筆を使う機会が増えてきたようで、鉛筆を握り込んで持つことを自然に学習してしまったようです。その方が、鉛筆が安定するからですね。
 まさ君は、親や私の言い分が承服できません。言葉では反抗しないものの、からだ中から不満のオーラが吹き出ていました。そして、いくら注意してもすぐに持ち方を変えてしまいますし、涙まで出てきます。自分で発見したこの持ち方ならば、複雑な線も、難しい字もなぞれます。「どうしてこの持ち方がいけないのだろう。」と思うのは当然ですね。
幼児のほとんどが、このように書きやすい持ち方を優先し、それが悪い癖になって定着してしまうのです。

 まさ君の受難は当分続きます。



 【クレパスが使えない!?】

  −最近の幼児の筆記用具事情− 



・一般に「クレパス」といわれているものは、 クレヨン(crayon)とパステル(pastel)の特色をとりいれた棒状の絵具。商品名。
ちなみに
・「クレヨン」とは、
(1)洋画でデッサンに用いる棒状の絵具の総称。パステル・コンテ・チョークの類。
(2)学童などが用いる図画用の絵具。石鹸・蝋・脂肪などに各種の顔料をまぜて棒状に造る。ワックス‐クレヨン。クレオン。
・「パステル」とは
洋画に用いる乾性絵具。レーキ性の色料に炭酸カルシウム・白土などを加えた粉末をアラビア‐ゴムなどで練り固め棒状にしたもの。 18世紀頃から使用。
(以上「広辞苑」から) 


 「クレパス」は商品名ではありますが、まあほとんど一般名詞化していますので以下「クレパス」で話を進めます。
 私が幼稚園の頃は、「クレパス」は憧れの用具でした。子どもたちの時代は、お絵かきの主流でした。 独特の匂いが今も記憶に残っています。
 近頃は、マーカーの方が主流です。なぜならば、手も服も部屋も汚れないから。
 どうやら、このマーカーの出現が、筆記用具の持ち方を損なった一因らしい。マーカーで色塗りをすると、軸をにぎって持つため、指先の感覚は養われない。
以下、筆記用具について、幼稚園の主任とのよもやま話。

私 「鉛筆を持たせるより、マーカーがいいよ。それもうんと軸の太いもの。これで指先が軸にきちんと当たる感触がわかる。細いと結局鉛筆と同じ持ち方になってしまうから効果がない。」
主任「そういえば、最近のマーカーは軸が細いかな。」
私 「クレヨンの短くなったもので、線を書かせたらどうなるかね?指先でつまんで持つしかないから、効果があると思うけど。」   
主任「そういえば最近はあまりクレパスは使わないからねー。お絵かきはパスが良いと思うのだけどね。」

ということで、年中の園児に短いクレパスで、線を書かせみました。

豊かな時代に育った子どもたちは、短いクレパスを使うことがないのか、予想以上に扱いが下手でした。
はじめのうちはぎこちない持ち方でしたが、 運筆練習後、挿絵を塗り絵にして、色塗りをさせているうちに自発的に指先でつまんで持って、色を塗っていました。そうしないと短いクレパスは、うまく使えないからです。
このような、鉛筆の持ち方につながるようなことを、遊びの中でうまく取り入れると、効果があるのですがねえ・・・


☆進んで鉛筆の持ち方を直した翔君☆ 

小学校3年生、まだまだ遅くはありません。  

   

 


 小学校3年の翔君は、文字を書くことで精一杯でした。 ですから、 いくら注意しても「いいじゃん!」といって書き方を直してくれませんでした。 3年生になって、自分の字がきれいでないことが情けなくなったのか、 「このままではいけない」と思っている様子が見えましたので、 個人的なメニューをつくり、書き方の基本的な学習を再度いたしました。
本人に「きれいな字が書きたい」という自覚がありますので、目に見えた進歩があります。(^o^)/
次々と目標が達成でき、“積極的”に、きちんとした書き方をするようになりました。
けれども、持ち方は「この方が書きやすい」といってなかなか直してくれませんでした。 確かに、やっと運筆が安定してきた段階なので無理に持ち方を変えさせると気力が萎えると思い、 しばらくは見守ることにしました。

書くことに自分なりの自信がついた段階で、 持ち方も直すことにしました。時期的にも、指先がかなり器用になって、 こちらの指示どおりにできるようになっています。

持ち方を変えて一ヶ月・・・ 「先生、もう1ヶ月経ったよ。」と翔君。「ほんとだねー。よくがんばってるよ、すばらしい。」と私。
いつのまにか、当たり前に思えていたのですが、本人は毎回一生懸命努力していたのです。 努力を評価してやらなくなった自分を反省しました。 「こんな風にして、子どもをダメにするんだ・・・」と。 子どもの努力をきちんと評価してやらないのは、のびる芽をつんでしまうことになるのですね。

そうは言っても、学校や家での学習ノートの字は油断するともとの雑な書き方ですが。。。

 左利きの場合  

   ー左利きは直すべき?ー 10月27日

 幼児期に、左利きを直すべきかそのままにするかは誰が決める?  

 


 先日、学会で左利きについての発表がありました。 改めて考えてみますと、不思議なことに、文字を書くことに関しては、 左利きの児童・生徒への教育的な配慮がないのですね。
左利きグッズとしていろいろと紹介されている中に、左利きのための学習教材が見当たりません。
私も左利きですし、息子も左利きです。
私の時代は当然のように、右手で書くように、親から直されましたが、 別にそれが異なこととも思いませんでした。
息子(27才)の場合は、私の判断で右手で書くようにさせました。 日本は右手社会であるから、両方使えたほうが、 何かと不都合がないだろうと思ったからです。 右手で書くことが定着したのは小学校4年の頃でした。今は文字は右手で書いているようです。
私も息子も右手で文字を書くようにさせられた(?)ことが、ストレスにはなっていません。
けれども、 ネットなどで左利きの検索をしますと、利き手でない右手で文字を書くことには、かなり反論・反発があるようです。
様々な意見が書かれており、興味深く読みました。 正直なところ、左利きであるのに、右手で 文字を書くように指導されたことがかなりストレスになっている人が多いのにはいささか驚いています。
たしかに、私の所にも左手のままで書かせてくださいというお母さんもいらっしゃいます。 右手で書かせるようにしたいと言われる方もおられます。
どちらにしても、まだ5才前後ですので、 本人にはあまり確固とした意志はありません。本人の利き手の度合いもあるでしょうが、 学習内容によっては右手でできるものもあります。
私は、基本的には幼児期には、右手で書くようにしたほうが好ましいと考えています。 なぜならば、左手で書くような環境が整っていないからです。けれども、教材によっては、左手で書くことも認めています。 最近はどちらにも使用できるような教材をできるだけ取り入れています。

いずれにせよ、自分の判断力が未熟な、幼児期において、 左利きの子どもたちの指導をどうするのかはもう少し真剣に考える必要があります。 現時点では、保護者の都合によって子どもの書き方が決められているように思われます。
辛口に言わせてもらいますと、みんな本気では考えていません。 本気で考えるならば、左手で書くための、教材や指導メソッドがもっとあるはずですから。

 指先の退化

             


 幼稚園で豆と抓ませてみました。


【指先の皮膚感覚がない?】


  正しい持ち方(いわゆる標準的な持ち方のことです)のできない子どもたちの多くは、鉛筆を握り込んでしまうため、 親指や人差し指の腹が鉛筆に当たっていません。
正しい持ち方をさせると、指の腹が鉛筆に当たる感触が不快なようで、 「痛い」という言い方をする子が何人かいました。どうやら指の腹の皮膚感覚が発達していないようです。
鉛筆と親指や人差し指の腹が鉛筆に当たる感触をつかむため、 大豆を容器に入れておいて、それを、親指と人差し指でつまみだして、 並べるという遊びをさせてみました。
やはり、鉛筆がうまく持てない子は豆がつまめませんでした。 けれども、年長ですからしばらく繰り返しているうちにできるようになりました。 そして、これは持ち方の指導には効果的でした。指の腹が鉛筆に当たる感触がつかめたようで、持ち方を直すことに抵抗しませんでした。

しかし、まあ、子どもたちがなんとも不器用になっていることか・・・

 最初のお便りは・・・
       やはり「ブツブツ。。。」


 書き方指導は今(年長後半)が旬! 
何でも「早ければ良い」というものではありません。

早くから文字を書かせて、きれいに書けないことに腹を立てるのは、 時期が来ていないものを食べて「まずい!」と決めつけてしまうのと同じ。
何でも旬のときに、上手に調理すればとてもおいしくいただけますね。
文字の書き方も指導に最も適切な時期があります。その時を見逃してはなりません。


先日行いました、書き方(書写)の指導に関するアンケートの回答にも、 “最初の指導が肝心!”ということからか、 「早くからきちんとした指導をするべき」という意見が、少なからずありました。そして、

(>_<) 「最初にきちんと指導をしてもらえなかったから、鉛筆の持ち方が、今でもヘン!」
(>_<) 「筆順がめちゃくちゃなのは、指導が行きとどいていなかったから。」
といった、苦情もありました。でもねえ〜  

(・_・;) 「本人に自覚がないうちは、いくら注意していても・・・」   
(・_・;) 「教師にだけ指導を託されても・・・」
という、こちらの言い分もあります。

子どもたちは持ち方や筆順のまちがいを、「だって書きにくいんだもん。」ということで、 自分を正当化して、わざわざむずかしい書き方をしようとはしません。それはある意味、道理です。 それに、書写の指導は週に一度しかも一時間のみ、指導者が見ていないところで文字を書く機会のほうが、 はるかに多いんですよねえ〜。

何度も申しますように、近年、子どもたちが文字を書くことに目覚めるのは早くなっています。 けれども、鉛筆を持つ手指の方はむしろ退行しています。 ですから、“速く”“きれいに”書けるようになってほしいという保護者の願いは、 “早くから書かせる”ということでは達成できません。
やみくもに早くから書かせるのではなく“発達段階に応じた”書かせ方が大切です。

そうはいっても、この“発達段階”というものがいつまでたっても研究されないのです。
幼児期の書写については相変わらず情報は少ない、というよりほとんどないのです(:_;)
「とりあえず、書けるようになっていれば学校で何とかしてくれるでしょ。 文字の指導は、もともとは学校ですることだし・・・」
と安易に構えていると、学校では
「入学前に書かせるから、 悪い癖がついてしまって、教えてそのとおりにならない。」
と、責任を回避されます。

「やっぱり、幼児期の学習メソッドを考えなくてはならないのかな〜」

・・・ブツブツぼやいてもはじまりませんね。

まずは、今が旬の年長児たちの指導を、やるっきゃない!! 

 
       




新学期が始まりました!

  学校から毛筆習字(書写)が消える…? ?
 学校では英語やパソコンの時間のために、書写に充てる時間は削減されそうです。
 とうとう学校教育の中でも窓際に… 
 「習字教室はどうなるんでしょ?」
 …なんて不安がってもいられません。
 字の下手な子は年々増えています!今こそ、習字教室のがんばり時!!
 …なのですが、習字塾の立場は相変わらずでして、 習い事としては、学習塾のために一番先に止めさせられる習い事です。 f^_^;
 
 「きれいでなくても読めればいい。」
   「清書はパソコンがするからうそ字でなければいい。」
 と、うそぶいている間に子どもたちの書写の力が加速度的に低下しました。
 いくらパソコンが普及しても、文字を覚える最初の手段は手書き! 文字は書いて覚えるのが一番效果的。 
 かの有名な哲学者カントも、「外部の脳である。」と言ったとか。 手を使って脳を鍛えなくなった現代人への警告です。

 もはや、「字の汚さ」は「読みにくい」をとおりこして、点画の欠落による「うそ字」にさえも生じさせています!
        点画の欠落は日常茶飯事。うそ字、あて字がいっぱい!




 熱心な幼児期での文字指導


 4月5月の習字教室は幼稚園児でにぎわいます。

 子どもたちもちょうど文字に関心があって、習わせるには良い時期だと思われます。
 入学後に学校で習うだけでは間に合わないという不安もあるのでしょう。

 (その割には、字の汚い子どもが多くなったという実態があるのは何故でしょう。)


 私も、毎年5月から翌年3月まで、年長児を対象とした幼児教室を開きます。
 年長(5,6才児)ともなりますと、多くの子どもたちは文字が書けています。
 けれども、その書き方には目を見張るばかり。
 今年も例年通り、鉛筆の持ち方に問題のある子どもたちが大勢います。
 学校の書写の教科書にあるような持ち方ができている子どもはほとんどいません。

 鉛筆が細長いものですから、かなり無理をして持っています。 手の指がまだそれほど器用に使える状態でないのに、小さな文字を書くからなのですね。

 そのせいで姿勢も悪くなります。

 幼児期には、文字を多く書かせるより、姿勢や持ち方をきちんと身につけさせる方が重要と、私は考えています。
鉛筆がうまくコントロールできれば、思い通りの線が書け、文字は形良く書けるようになるからです。 コントロールの悪い腕では、いくら書いてもうまくはなりません。
小学校入学後、うまくならない原因の多くは持ち方にあります。

 姿勢を正しくして書くことの大切さ  

   ー子どもたちの実態からー 5月27日

 指導当初の状況は、文字を書ける子も書けない子も姿勢がよいとはいえませんでした。 まず、10分もすわれない子どもがかなりいました。

子どもたちは、文字を書いているときには自分の姿勢を自分で見ることができません。 それに、まだ文字を書くことで精一杯。なりふりをかまってなんかいられません。

 それよりも何よりも、近頃は姿勢の悪いことを、誰も叱りません。 文字を書くときに限らず、乘物の中、ご飯を食べているとき、人の話を聞くときなど日常の場で、
「ちゃんと座りなさいっ!!」
と、叱る人がいません。 ですから正しい姿勢というものがどういうものかを、からだが認識していないともいえます。  

 


 先日、大学での授業で(書道を専門に学んでいる学生たちです)次のような質問をしました。 みなさまも考えてみてください

 私 「小学校の教科書には、『文字を書く時には、姿勢や鉛筆の持ち方に気をつけましょう。』 とありますが、それはなぜでしょう?」
 学生「文字を疲れないように書くためです。」
 学生「きちんとした字を書くためです。」
 私 「そうですよね、でも実際にはほとんどの子どもが姿勢は悪く、持ち方も良くない。 皆さんもそうですね。お世辞にも良いとは言えません。 あなたがたは、本当に良い姿勢で書いたほうが、きれいに書けると思っているわけ?」
 学生「・・・・・・・」
私 「ほらね、『良い持ち方、良い姿勢』が本当に効果的であるとは思っていないでしょ。 現場もそう。指導者は本当に必要とは思っていない。だからあの手この手がでない。
 本当に必要であれば、それなりの対策を取るはずです。
それなのに、相も変わらず書写の教科書には『良い持ち方、良い姿勢』の絵や説明があるんですよ。
ヘンですよね〜。教えられないことなんか教科書に載せなきゃ良いのにね?!」
 学生「・・・・・・・」
 学生は、困り果てた表情で私の顔を見ておりました。
 次に、『良い持ち方とは』という質問が来る、と怯えていたのかもしれません(笑)

 冗談はさておき、 今一度、『良い持ち方、良い姿勢』は本当に必要なのかどうかを、 真剣に考えてみる必要はありそうです。

 姿勢を正しくすることの必要性

             6月8日


 今年は幼稚園での書き方教室を開始するにあたり、アンケートで、 子どもの文字の書き方で一番気になることを、お尋ねしました。

 「姿勢」「鉛筆の持ち方」「字形」「筆順」どれも気になるところですが・・・

「姿勢」が気になると答えられたかたが、ずいぶんといらっしゃいました。
 「いくら、注意してもその時だけ。すぐにもとの状態になります。」
 と添え書きをされた方もいらっしゃいました。


【姿勢よく座ることは、指導できないのでしょうか?】


 

そんなことはありません。
私は使用するプリントと、指導の方法にちょっとした工夫をして、自然に正座して書くことができるようにしています。 そうすることで、身体が姿勢良く座ることを覚えるからです。
「姿勢良くしなさい。」とは言いません。(言ったところで、効果はないですから)

【3回目できちんと座れるようになったB君】
私の教室では座り机を使用しています。ですからみんな正座です。 B君は特別身体が大きいので、教室の机では低すぎて、正座が難しいかな、と思っていました。 本人も正座すると、体重が足にかかりすぐに足がしびれると、苦痛を訴えていましたので、 お母さんとも相談の上、正座をすることは強制しなことにしましたが、 3回目のおけいこで、正座ができるようになりました。やはりその方が書きやすいということを からだが学習したのでしょう。身体の大きさではないことがよくわかりました。 B君はいつも誉められて、ますます、良い姿勢が定着しています。

もちろんほかの子どもたちもバッチリ!!!

要するに、やり方次第です。