書写・書道・教育にもの申す 2013
 


☆やぶにらみ桂風庵今年もヨロシクッ!!☆




その6  留学生の毛筆書写
その5  もっとしりたい王羲之
その4  巻筆ってご存じ?
その3  文字は無理して書かせるな?!
その2  手書きの出口
その1  文学部での書写教育




★留学生の毛筆書写★  2013.6.21

 今年のH大の基礎書道の講座は国際色豊か。ブラジルからきたU君、「ボクは字がうまくないといわれます。上手になりますか?」との質問。「それは毛筆の文字ですか、それとも硬筆ですか。うまく書けないのは漢字やひらがなですか。」と聞いてみたところ、すべてだという。
ある意味興味津々。
 U君はとても熱心に学習している。わからないところは、きちんとした(!)日本語で質問してくる。最初のときから見れば、とても上手になっている。しかし、本人は不満そう。「うまくなりません」とくやしそう。頭では理解できても、筆という用具の扱いには慣れていない。おそらく文字を書くことにおいて書法というものも教育されていないのであろう。U君の筆記用具の持ち方は、速く書くことには対応できない持ち方である。
 漢字を書いても筆順は正確だし、点画の誤りもない。しかし、字形まで正確に書くという指導は受けていないようで、線の長さや傾きには頓着しない。字形がよくないことは直感的にはわかるが、それがどうしてなのかを理解するまでかなり時間がかかった。
 U君に限ったことではないが、課題がうまく書けない学生の多くが手本をきちんと半紙の横に置いていない。つまり、手本はチラ見程度で書いている。うまくなったな、と思うとやはり手本をきちんと見ている。文字の上達には、多く書くよりよく見ることが一番かな。

 留学生は他にもインドネシア、台湾生まれのニュージーランド育ち、上海、北京などいろいろな所から来ている。中国は書道は本場とおもいきや、毛筆の授業はほとんどなかったという。そして、今の小・中学生には必須であるとのこと。(どうりで、中国製品の紙や筆が高騰したわけだ)留学生の書き方や考え方から、日本での書写書道教育の是非が見えてくるのもおもしろい。いずれにせよ、彼らは実にまじめである。






★もっとしりたい王羲之★  2013.2.11

「書聖王羲之」の展覧会に行きました。

毎日新聞さんは、「行穣帖」を王羲之の絶筆!と、絶賛しとられました~ q(^o^)p/

土曜日の午後行ったのですが、入館者はそこそこ。(これを空いていたとみるか、混んでいたと見るかは微妙)

とまれ、どの展示にも大渋滞はなく、急かされることなく見ることができました。「蘭亭序」の展示の時は、そこだけ(!)大混雑だったけれど。

企画者は王羲之の何を見せたかったのか、よくわからない展示だったような印象がある。
某氏は「中国書道史の勉強になった」と皮肉っていました。まあ、会場が広いから何でも展示できる、というか色々詰め込まないと埋まらないわけで・・・

王羲之という人物は確かに存在していたが、文字としての字姿は影しか残っていない。
「実に立派な書である」という評価は、王羲之の文字をコピーした人物の技量に依るところが大きいのに、書家はその影を神のように敬い、その影を手本として崇め、習う。

拓本(コピー)の拓本(コピー)を作ることで多くの拓本の法帖が伝存しているが、それらはどんどん変化している。そんな、悲しい王羲之も展示されていました。






★年度末表紙★  2012.12.18

  ことしも残すところ1日、7月以来更新していないので、せめて2012下半期の出来事を羅列して、今年最後の更新の記録としておこう。

8月、某大学の幼児の書字研究のお手伝いとして、夏休みに必死で幼児の発達に関する本や論文を読みあさった。わが書字指導の方向性が発達をふまえたものであることが確信でき、嬉しい夏だった。

9月、それらの著書とうちの幼稚園での書字の実態をもとに、学会発表する資料を作成。初めて、データをグラフにすることができた。「パソコンってすごいな~」と時代遅れが感激。

10月、学会発表。幼児の書字なんてあまり関心を持ってもらえないということを実感。教育の学会もだんだんと現場から離れて、観念的。研究発表としてはおもしろいけれど、これって、教育学会の方向としてどうなん??

もうひとつ10月、北海道にお住いの、熱心な書道塾の先生と念願の対面。私の若い頃にそっくり。あの頃の熱意が少々なくなっている自分に気付かされた。彼女はすばらしい在野の教育者である。こんな書道教室がたくさん増えると子どもたちは生き生きと文字を書くだろうに。M先生、がんばって!!!

11月、わが家の引っ越し。念願の書庫付きのアトリエ。しばらくは、ここで一人遊び~!

12月、いつまでも落ち着かないけれど、快適な新生活。しかし、今年は忙しかった~

還暦を迎えたワタシ、心機一転、新しい人生を踏み出そう!!なんて思ってはいるのですが、まだまだおひきずりの人生です。

これまで私を支えてくださったみなさま、どうかこれからも支えてくださいませませ。





★巻筆ってご存じ?!★  2012.5.25

滋賀県高島市にある攀桂堂さんは、唯一紙巻き筆の製法を伝える筆匠さんです。現在の当主が15代雲平さん。

その雲平さんちに突撃訪問してきました。
ネットで、お店が開いていることは確認。運がよけりゃお話が聞けるかも…くらいの軽い気持ちで訪問。

運良くご当主がいらっしゃり、お話も聞くことができました。
このお店の屋号は5代ご当主が近衛家煕公からいただいたのだそうです。そして、明治期まで禁裏御所の御用達だったそうです。明治になってからは、お店を東京に構えられたこともあって、比田井天来をはじめとする、多くの書家から求められたとのこと。実は、すごく由緒あるお店だったのです。熊野筆の歴史なんて比じゃないわけね。

日本では、水筆が輸入されるまでは、この巻筆が主流。江戸時代に現在のような水筆が多く輸入されて、今に至っているのでしょう。熊野では、毛を中国から輸入して水筆を作っているのですね。手間の掛かるコストパフォーマンスのよくない巻筆は段々と廃れていったのでしょう。水筆も今はピンキリ。毛の質の所為や、墨汁の所為もあって、今は消耗品と化しています。悲しいことです。

職人さんが心をこめて作ってくださっていることを忘れてはなりません。と、しみじみ思いました。雲平さんありがとうございました!!






 


巻筆って、おそろしく手間が掛かるんですね。大切に使わなくては!!!

   




★文字は無理して書かせるな?!★  2012.5.25

今年も書き方教室を開始した。様々な園児がやってくる。一斉募集なので「まだ速いかな?」という子もいれば、「あーぁ、無理して書かせるからこんな風になっているのよね~」という子もいる。

うちの教室は、文字はできるだけ書かせないでひたすら運筆練習をしています。
運筆練習が十分にできた子は、必ずうまくなります。

それと、きちんと説明を聞く態度を育てています。
多く書くよりしっかり聞くこと。これができない子はいつまでたっても上手になりません。

「字をたくさん書けば、そのうち上手になる」という誤った思い込みは、依然として親の間に根強くはびこっているのよねぇ。やみくもに書かせていれば、確かに何となくは書けるようになるんです。が、上手にはなりません、って!!

「何で、手本通りに書かないのッ!!」(そのあとに続くのは「書き方教室では何を教えているのかしらん…(ブツブツ)」)

大方の場合、上達しない子は、話を聞いていません。運筆練習をまじめにしていません。

多分、親の意識と、こちらの指導方針の間で戸惑っているのでしょう。

入学するまでに無理して字を書かせる必要はないのに…と思いながら、幼稚園で書き方教室なんぞをしているわけです。本当はね、「運筆教室」とか「持ち方教室」とか「姿勢教室」なんてことをしたいのですがね~
   




★手書きの出口★  2012.5.13

“平清盛展”に行って、いろいろな日記や経典、絵巻物など手書き文字の資料や美術品をみた。

美しい文字は、それだけで感動を呼ぶ。

これらの多くは翻刻され、活字でも読むことができる。そのほうが現代の我々には、読みやすいし、データ化されダウンロードが自由になれば、居ながらにして読み取る事ができ、猶更便利である。

手書きにしても活字にしても、内容が変わるわけではない。しかし、手書きされたものからは、内容以外の当時のさまざまな思いが伝わってくる。人物が身近に感じられる。共によろこび、共に苦しみ・・・

今年も又、幼児たちと共に文字を書くことで、よろこび、苦しむ時期となった。

子どもたちが、書くことを苦痛としないように、きれいに書けるようになったと笑顔を見せてくれるように、書くことが苦手で勉強が嫌いにならないように・・・

そして、いにしえの文字に憧れ、文字文化に興味を持ってくれるように。
   




★文学部での書写教育★  2011.4.11

今年から新たにもう一つ非常勤のお仕事を引き受けてしまった。来月還暦のワ・タ・シ
よく働くでっしょ!! 年金もらうまでは、お小遣いが足りないんで・・・お仕事、お仕事!!

新しい職場は、長年学生証を発行してもらっている所。これって、いささか妙な気持ち。

講座の内容は中学校の書写の免許取得のためのアレコレ、講座名は「基礎書道A」、書道ねえ・・・

まあ、文学部ですから、国語の免許でも取っておかなければ仕事の間口が狭くて、と言う程度の学生がほとんどです。過去のキャリアも様々。ほとんどの学生が、この講座で少しでも自分の文字を上達させたい、というのが受講の動機。

「ここは書道教室ではないのですよ」とも言えず・・・でも、まずは書くことの楽しさと緊張感を体得してもらおうと、さまざまな手だてで学生を煙に巻いている私。

彼らの受講態度をみていると、なかなか興味深い。書写・書道の行く末がいろいろと案じられる。

毛筆、いえ手書きすることがどんどんと少なくなっている昨今、衰退を嘆くより、いかにしておもしろさ、奥深さを伝えるかであろう。

この仕事をいただいたのも、そのチャンスの一つとしなくては!

今は、毛筆で書くことで精一杯の彼らであるが、どのように成長してゆくか、楽しみ。

ええ仕事もらって、ありがたいこっちゃ。