−幼児期に身につけてほしいことアレコレ−


『文字の書き方@書かせ方 鉛筆編 』


★鉛筆の持ち方がヘン★

いつのまにか字を書くようになったA子ちゃん。

「あら、教えないのに書けるようになっている」
と、ちょっと嬉しいお母さん。

でも、よく見ると鉛筆の持ち方が変。姿勢も悪い。
「このままで良いのかしら?」と心配なお母さん。

    

 鉛筆を正しく持つことは、幼い子どもにとってはとても困難なことです。なぜならば、鉛筆は、大人が考えているより、 はるかに扱いにくい用具だからです。


 鉛筆は、強く握りしめるものではありません。指先で持つものです。とはいえ、指先がしっかり使えなくては持てません。幼児期ではまだ手指は十分には発達していません。ですから、指先で鉛筆を持つように言われても、それでは鉛筆がぐらぐらして書きにくい、だから写真のように、ぎゅっと握り締めて安定させているのです。

そのほうが書きやすいから、いくら注意しても言うことを聞きいれてくれないのです。

★姿勢、執筆の重要性★

字が書けるようになったことが嬉しい一方で、鉛筆の持ち方が心配になったお母さんは、インターネットで鉛筆の持ち方について検索をしました。

ずいぶんとヒットします。持ち方についての悩みって、結構多いのですね。

お母さんは、さっそくA子ちゃんに鉛筆の持ち方をなおすように言いました。すなおなA子ちゃんは、一生懸命に持ち方を変えようとするのですが、その持ち方では書きにくそうです。ゆっくりと書けば、何とか書けるのですが、いつものようにすらすらとは書けません。時間がたつと、もとの持ち方に戻してしまいます。

「この方が書きやすい」「お母さんの言う持ち方は疲れるし、力が入らない」という理由です。
 
文字の書き方の本で紹介された持ち方の説明

 ひらがなのおけいこ帳などには、必ず最初のページに、「正しい姿勢で書こう」「鉛筆は正しく持とう」 という項目のもとに参考写真や、イラストが載せられています。
けれども、もはやこれはテキスト制作上の単なるお約束。
なぜなら、

 ・鉛筆の持ち方は、子ども自身が、字を書いているときにリアルタイムで確認しにくい。
 ・持ち方を直しても即効性がないどころか、書きにくいし、ヘンな字になったとさえ思われる。
 ・短期間では直せない。

というわけで、指導も非常に行いにくいというのが実状。しかし…
★姿勢や鉛筆の持ち方は正しくしないといけないの?★

A子ちゃんは字を書くとき、こんなふう(↓)に姿勢が良くありません。でも、字を書くことは大好きで、ひらがなだけではなく、漢字も片仮名も書いています。

「こんなにすらすらと書けるのだから、少々持ち方が良くなくても、今はまだ、そのままでもいいのじゃないかしら?」とお母さんは思います。「でも・・・ 」と心配でもあります。姿勢や鉛筆の持ち方が悪いと、きれいな字は書けないのでしょうか?

鉛筆を持つとき、指の位置と状態がよくないと(いわゆる悪い持ち方)、 書いている手元が見えません。

つまり、自分の書いている文字が見えないのです。

手元を見るためには、体を斜めにして横からのぞくしかない。横からのぞくと体は傾きます。
斜めにした体の状態を保つために、机に寄りかかる。

だから姿勢が悪くなる!

鉛筆の持ち方のせいで、姿勢までも悪くなります。
これは一大事、やはり持ち方は直した方がいいと思いませんか?




★困った鉛筆の持ち方★

(1)親指が飛び出してしまっています


(2)人差し指がとんがっています。


(3)鉛筆が紙の方に倒れてしまっています。

多くの幼児がこのような持ち方をしています。いくら注意しても「このほうがいい」と、やめようとしません。

大好きなお母さんのお願いでも、聞き入れられないほど、持ち方を正しくすることは難しいのです。子どもたちにもできない事情があるのです。


(1)は指先で鉛筆を持とうとしても、鉛筆が細いため安定しません。鉛筆を安定させるため、ぎゅっと握りしめるたら、 親指がはみ出てしまったのです。


(2)は人差し指で鉛筆を押さえ込んでいます。そのため、人差し指にはとても力が入っています。 そのため、指がとんがってしまったのです。


(3)は(2)と似ていますが、鉛筆がさらに紙の方に倒れてしまって、鉛筆が思い通りの方向に行ってくれません。


このように、持ち方のせいで、運筆が制約されるて字がうまく書けない場合があります。




★好ましい鉛筆の持ち方★ 

「正しい持ち方」というと、それ以外は間違った持ち方ということになってしまいます。 持ち方が異なっていても、文字は書けるのですから、特定の持ち方を「正しい持ち方」と断定することはできません。

ここで紹介する「正しい持ち方」とは、文字教材で紹介されている「正しい持ち方」であり、 学校教育で指導される「好ましい持ち方」と考えてください。

教科書に紹介された持ち方の図



子どもたちが、鉛筆をうまく使えないのは、鉛筆を持つのではなく、握るからなのです。

鉛筆は親指、人差し指、中指の3本の指の先で持ちます。これを3点支持といいます。
この3本の指がうまく働いたとき、思い通りの形の字が書けるのです。 けれども、現代の子どもたちには、それがなかなかうまくできないようです。


それは、現代っ子は

手指の発達が良くない、つまり、不器用

だからなのです。








★幼児に鉛筆を持たせるのは早すぎる?★

「現代っ子は不器用である」といわれます。確かに、何でもワンタッチでできる便利な時代で指先の器用さは退化しているようです。「お箸が持てない」「ぞうきんが絞れない」「はさみがつかえない」「折り紙がへた」

挙げればきりがありません。

このような不器用っ子にとって、鉛筆もまた、使えない用具となってしまったのです。
 
小学校で使う鉛筆がきちんと持てるようになるのは、年長後半からと言っても過言ではありません。

その一方で、文字は幼稚園でもすっかり根付いています。入学前にはほとんどの幼児が文字を書いています。

このギャップで、鉛筆の持ち方が悪くなり、早くから字は書きはじめても、その後はあまりうまくはならない、という 事態が生じているのです。
★疲れない筆記用具では良い持ち方ができる★



 
ボールペンをよく使う職場の人たちの肩こりを解消する為に、グリップの太いものが開発され、爆発的な売れ行きをしました。その後、殆どのボールペンはグリップのところが太くなったり、クッションのある素材を使うようになりました。

余談ですが、昔のシャープペンシルの芯はとても折れやすかったのですが、メーカーは折れにくい強度芯を開発しました。企業の対応はすばやいもんです。

そして、子どもたちの鉛筆の持ち方が悪いという意見に対応するべく、3本の指の位置がわかりやすい三角鉛筆を考案しました。

さらに、それは細すぎるため疲れやすいということから、太い三角鉛筆が開発され、今はさまざまなものが出回っています。

とはいえ、少々お高い・・・ 
★幼児にオススメの太い鉛筆★

“くもんのこども鉛筆”
芯の濃さで長さも違います。6Bが最年少用で「手が小さいから短めにした」という配慮でしょう。この長さへの配慮は嬉しい。


“ステッドラ−社の書き方鉛筆”
これは、とても握った感触は良いのですが、長すぎることと、2Bと表示があるけれど、芯が硬すぎる。でも、持ち方を覚えるには抜群! 半分に切って使うべし。




以下は、トンボのおけいこえんぴつ。(写真上)木の材質の中では、滑らないのでもちやすさは一番。生協のもの(写真下)は、長いけれど、書きやすい。何より、お値段が安くて嬉しい。小学生以上にはオススメです。


 日本では“くもんのこども鉛筆”が、早くから提供されてきた。私が、幼児の文字指導を始めた頃には、すでに発売されているのだから、かれこれ四半世紀以上前からあることになる。当時はまだどこでも簡単に手に入る物でもなかった。

わたしも、まだ鉛筆の持ち方がこれほど運筆に影響するとも思っていなかったし、持ち方への危機感もうすかった。しかし・・・ 

今では、幼児期から文字を指導するなら、運筆が楽な太い鉛筆を与えるべきと感じている。
わが教室では、太い鉛筆は必須アイテム。ドイツのステッドラー社のものを使用している。 

太いうえに鉛筆の表面の塗料のおかげで滑りにくいので、指先の器用さがまだ十分でない子どもには最適。

ただ、芯が硬い。それは、この鉛筆が製図のために開発されたものであり、芯が柔らかいと鉛筆が折れやすいし図面が汚れやすいからである。文字を書くには滑らかさに欠ける。
 
数年前、朝日新聞に「幼児には、これがオススメの鉛筆である」という私の意見が新聞に掲載された。その後、ステッドラー社の日本支社から問い合わせがあり、それ以後「書き方鉛筆」という名称がついたようである。
 (私には、何もお礼はなかったのですが・・・)
しかしこれは1本210円と、高くって。。。

生協からもこのタイプの鉛筆が出ています。軸がちょっと滑りやすいのが難点。

なぜか、西本願寺の“ほとけさまグッズ”の中にもありました。3本で504円。



★指先にやさしい太い色鉛筆★




左から、“”トンボ おけいこえんぴつ”“くもん こどもえんぴつ”“リラ 色鉛筆”“ステッドラー 色鉛筆”(これはちょっと長めだけれど、指へのフィット感はイチオシ)

百均のお店にも色鉛筆はあるけれど・・・
 
こどもたちはお絵かきやぬりえが大好きです。家や衣服の汚れない色鉛筆やクーピーが人気ですが・・・

こどもの手指の発達のためには、これらはNG! 

使わせるなら、手指が発達するようなものを使わせてほしいですね。 

近頃は、知育用具、教材と称して、かなりたくさん出回っています。

ネットで“色鉛筆 太い”という項目で検索をして、わりと簡単に、左のような物が手に入りました。
これらは、持ちやすいし、指に負担がかかりません。

小学生が使うような細いものは、握り込んでしまい、持ち方の悪さを助長します。

★4歳児でもこのとおり!★





 
 
ちゃんと発達段階に見合った学習をすれば、鉛筆はうまく持てるのです。